今年度,障害者権利条約に批准し,障害分野は新たなステージに進もうとしていますが,
そんな中で精神科病床を居住系施設に転換しようという動きがあり,やどかり出版では「響き合う街で」でその問題を特集として取り上げました.長期入院を経てやどかりの里を利用しながら退院され,地域生活を送っている人たちへのインタビューを行いました.7人の方は口々に自由を手に入れた喜びを話してくださっていました.権利条約は障害のある人の特別な権利を求めているものではありませんが,7人が手にしたことも人としての当たり前の権利なのです.この権利を国の乱暴な制度化によって奪われる人たちがいることをもっと真剣に考えるべきだと強く思います・
そして,原稿をお願いした方々からは,単にこの動きに反対するのではなく,具体的な提案もしていただきました.日本は国際協調を大事にする国だといわれています.欧米諸国との大きな乖離をこのままにしてはいけないのです.社会的入院を真の意味でこの国からなくすために,多くの方とこの問題意識を共有したいと思っています.ぜひご一読いただきたい内容です.表紙の絵,この赤色のラインが日本の精神病床を表しています.
先週,高知県四万十市に行ってきました.「響き合う街で」の前号に原稿を寄せていただいた四万十市の心の健康相談センターが企画する「四万十市若者等支援地域連絡協議会」の研修会に呼んでいただいたのです.四万十市は,高知空港から100キロ余り,車だと約2時間半ほどかかります.今回はレンタカーを借りて,現地まで行きました.途中連翹(れんぎょう)や辛夷(こぶし)の花が満開で,関東よりも少し春が進んでいるような気がしました.
四万十市は中村市の時代から何度か伺う機会がありましたが,その御縁の最初は昨年亡くなられた鈴木文熹先生との調査活動でした.地域づくり運動全国交流集会という緩やかにつながる組織を作り,やどかりの里もそこに加わっています.
2010年に四万十市で「こころの健康政策構想会議」のお話をさせていただいたことがあり,その時の研修会を開催した実行委員会を継続されており,その流れの中で福祉事務所の中に心の健康相談センターを設置されたのです.(詳細は響き合う街で67号,2013年11月発行をご覧ください)
こころの健康政策構想会議の提言の中でもとりわけ重要だと考えていたことを四万十市で実際に取り組まれていることは,とてもうれしくて,多くの人にもっと知っていただきたいと思いました.
この相談センターが福祉事務所に設置されていることもとてもいいなあと思いました.そして,市民誰もに開かれた相談窓口になっています.もちろん障害者手帳の有無は問われませんし,「心の健康」について全般的に対応していくセクションになっています.まだ,始まったばかりの取り組みですが,四万十市に学び多くの自治体でこうした取り組みが広がっていることが期待されます.
この「心の健康相談センター」は,四万十市若者等支援地域連絡協議会の事務局も担っており,この協議会が幅広い関係者で組織されていることも四万十市の取り組みの大きな特徴だと思いました.総合相談窓口があったとしても,その機関ですべてが解決できるわけではありません.地域の中に横糸のつながりがはりめぐらされていくことで,心の健康相談センターの役割が果たせていくような仕組みになっているように思いました.